「先生、私、結婚することにしました」

2年生の中で一番清楚で、礼儀正しい生徒が、授業前にそう言った。

「そうなんだ。急だね。おめでとう。いつ?」

「5月14日らしいですよ。私も今日聞いてびっくりしたんです」

隣の子が言った。


「5月14日なら、先生の誕生日と近いんじゃない?先生、5月16日だもんね」

「うん。そうだよ。じゃあ、みんなで一緒にお祝いだね」


「いや、でも…」

今度は違う子が言った。

「実は○○が、首にしこりがあったんだけど、それがどうもあまりよくないみたいで、手術をしなきゃいけないらしいんです」

驚いて、僕はその子を見た。

その子は、勉強が一番できる子で、明るく勝ち気。

しかし、さすがに昨日はしょんぼりしていた。

若い子に突きつけられた厳しい現実。

しょんぼりしない方がおかしい。


「だから、結婚式のお祝いは、皆で祝えないかもしれないね。でも、まあ、何かあったら、私たちがちゃんと悲しんであげるからね」

一番仲のいいはずの女の子が、なんだか笑えないジョークを言った。

それを聞いて、泣きそうになる優秀な子。


「大丈夫、大丈夫。病院でちゃんと治療すれば、すぐに治せるよ」

僕もなんだか分からない慰めを言った。


「そうですね…先生。これも運命だと思います。私、がんばります。

先生…ところで、今日は何月何日か知ってますか?

きゃはは」

そして、生徒全員が笑った。


そう、僕はこのとき、2年生の性格を、すっかり忘れていたのだ。

授業前に教室の後ろに必死に隠れたり、教壇の下に潜り込んで突然足をつかんできたりするような生徒達であることを。


「もう、お前らのことは今後、祝福も心配もしない!」

そう、負け惜しみを言った。

「ごめぇ〜んなさ〜い、先生。きゃはは」


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